Büchel(ビューフェル)

●ビューフェル

牧童の角笛として用いられたアルプホルンの一種で、トランペット型のアルプホルンがBüchel(ビューフェル/ビュッフェル)です。あまり多くの資料が無く、詳しい歴史を知ることはできませんが、中央スイスで親しまれてきた楽器です。

Andreas Bader製のビューフェル。非常に整った倍音列で、プロ向けの傑作品です。楽器側のマウスピース・レシーバー部を交換することにより音程を調節することができます。

A.Bader製(左上)と白馬の工房製(右下)のビューフェル

●構造と調性

アルプホルンが全長約3.4メートル~3.6メートルで、G♭ /F#「ファ#」またはF「ファ」調であるのに対し、ビューフェルは一般的に約2.8メートルのB♭「シ♭」調で作られています。これは、一般的なトランペットの約2倍の長さ、フレンチホーンのB管と同じ長さです。

アルプホルンは巻きの無いストレートな形ですが、ビューフェルは管が2回折り曲がっており、アルプホルンに比べればコンパクトです。重量は1.2~1.5kg程度で、両手で持ち上げ、水平に構えて演奏します。

マウスピースはアルプホルンと同じものを用いる場合もありますが、アルプホルンよりも径が小さく、浅めのものを使います。

●演奏スタイル

ビューフェルは基本的にソロ、デュオで演奏されます。アルプホルンが3人以上~大編成でアンサンブル演奏され、演奏家人口も多い一方、その演奏の困難さと相まって、ビューフェルの演奏家は僅かです。

2016年、トラクーエ(スイス)で開催されたネンダス・アルプホルン競技会、ファイナルにおけるビューヘル・デュオ「Echo vom Hinterburgseeli」の演奏。